新思潮No.138 2016年5月号③
〈テープ起こし:山崎夫美子〉
奈良研修句会(2015年10月10日) 2ー作者未知の時点でー

合評会司会・寺田 靖

   ※秀句推薦者  ・佳作推薦者
しゅらあしゅら人に会うため汽車に乗る大 雪
※典子※ひでお※夫美子・和田洋子・ひろ子 (典子)一目で秀句にしようと思いました。修羅は阿修羅のことで、この世の情を捨てて 戦っていくような意味かと思うんですが、人は人とのかかわりなくしては生きていけない と思います。汽車に乗るというのは、人生そのものなのかと感じましたし、しゅらあしゅ らを平仮名にしてあることで、人生の戦いなどをやさしく表現していたので採らせていた だきました。
 
(夫美子)軽くいなしたような感じで詠みながら、よくよく考えると「いかにも論議して くれ」といわんばかりの表現で挑戦的にも見えます。けれど句全体のリズム感と、美形で 少年のような阿修羅が汽車に乗る姿を想像すると、何だか楽しくなって選びました。方向 は北へ向かうような気がします。阿修羅が人に会うためと云う見つけが面白いと思いまし た。
 
(ひろ子)以前に生活が上手く運ばない人の援助をする仕事をしていました。その方に会 いに行くのに北は石巻まで行きました。専門家の先生と一緒に、汽車の中で生活支援が上 手くいくよう打ち合わせをして行くのですが、現地で上手く運ばずに、地元の行政の人の 言葉に傷ついて帰ってくることも多々ありました。私が修羅とか阿修羅であるとは言いま せんが、心情的にはそういうものを感じて、この句のとおりに向かって行っていたなと思 いました。この句はきっと援助が上手く進んでいくような句になってるなと、そこに私の 救いを見出しましたので選びました。
 
(靖)この句は高得点句ですが、敢えて選ばれなかった方のご意見をいただきたく思いま す。
 
(内田真理子)選ばなかった理由と言われるのが一番つらいのですが、しゅらあしゅらっ てよく使われている感じがしたのと、人に会うためが少し説明的かと思いました。
 
(靖)私もこの句を選んでないのですが、最初に読んだ時はいい句だと思いました。読ん でいるうちに、しゅらあしゅらという表現が汽車の出発して行く音のしゅっしゅっしゅっ と重ねているかと思いました。もしかしたら、これを意識して作られたのではという気が してきて、最終的に気に入りながらも、選べなかったということです。
 
(作者)阿修羅は、誰かの句にありますよね。僕も使ってみようと思ったんです。しゅら あしゅらと書くと、しゅらあしゅらとも読めるような感じがするので、あまり大きな意味 はなく、自分の思いを投影して見ているので、いろんな阿修羅像の姿・形が見えてくるん です。素直に見てしまえば、可愛い綺麗な男の子という感じがします。人に会うため汽車 に乗るというのは、全く違いがなくて、今日は皆さんに会いたくて汽車に乗ってきたわけ で、しゅらしゅらでしゃらしゃらとしているのではないかと思います。
 
(俊介)松本芳味さんの句「臨月の/夜泣きそば屋の/修羅修羅ら」があり、気になりま した。
 
オフェリアの末裔なれば淡水魚本多洋子
※寿界※斉藤和子※和雄・竹生 (寿界)オフェリアはシェイクスピアのハムレットで、読んでいる人は多いと思いますが 、オフェリアという女性は特別金持ちのお嬢さんでも美人でもなく、言わば普通の女性と して描かれている。それと淡水魚との結びつきが上手いなと思ったんです。淡水魚は我々 子どもの頃は、家の近くの小川や池でメダカから始まって、その辺の淡水魚・魚に親しん だわけです。だから結局オフェリアというのは、魔物だとかそんなものではない。淡水魚 と結びつけているのが見事で、末裔なればという言葉で繋いで、オフェリアの末裔が淡水 魚なんだという持っていき方が実に上手いです。
 
(斉藤和子)先ほどおっしゃたように、オペラのハムレットで非業の死を遂げたオフェリ アですけれど、美しい小川で亡くなっていました。その命を繋いでいるならきっと淡水魚 だろうと、この作者が言い切っておられるのが潔い感じがしました。私は淡水魚が、姿も 香りも美しい鮎になっているんじゃないかと、想像をふくらませて、いい句だと思って選 びました。
 
(和雄)言葉の響きが美しいですし、見た目もきれいで、読み味、気持ちがとてもいい句 で魅かれました。何度か読み返してもそれは変わらなかったです。先のお二人と同じ感想 ですが、淡水魚になるという飛躍が凄いと思いました。多分作者は淡水魚に自分を投影し ているのかと感じました。ナルシスティックかなと思ったんですが、それよりもロマンチ ックさがいいなと。美しい句だと思いました。
 
(靖)採っておられない嬉久子さん。お願いします。
 
(嬉久子)きれいな句だと思いましたし、すんなり心に入ってきていい句だと思いました が、「オフェリアの末裔なれば淡水魚」より他にないだろうなと思ったとき、すんなりと いきすぎかなと思って避けてしまいました。
 
(作者)こんなに誉められたことは今までありませんので、とっても嬉しく思っています 。オフェリアについては、物語もそうですが、絵もいろいろ残っています。絵を見て水に さーっと流れていく感じが、これは絶対淡水魚だというふうに感じて詠みました。私は自句自解するのは嫌いなので、この辺にさせていただきます。

2016.6.2

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