新思潮No.144 2017年5月号②
壱岐研修句会(2016年11月5日) 1―作者未知の時点で―

合評会司会・山崎夫美子

(夫美子)それでは私の方で司会をさせていただきます。事前に互選による5句選出、う ち1句は秀句指定でお願いしました。秀句は2点、佳作は1点とした合点で、高得点の作 品から進めたいと思います。
   ※秀句推薦者  ・佳作推薦者
未使用の空と押し花眠る手帖雅 子
※俊介※恵子※愛郷・甫釦・宣子 (恵子)未使用の空は心の内に眠らせている将来の夢や希望で、青空を感じました。押し 花は美しい思い出と取りましたが、全体的にとても整った句で、手帖に秘められた初々し い希望に魅力を感じました。
 
(甫釦)今お聞きして、未使用の空はそういう意味なのかと遅まきながら気づきました。 手帖で未使用といえば将来の夢とかで、空はどういう意味かと考えたんですが、いい句だ ということは十分分かりましたのでいただききました。こんな句を作ってみたいです。
 
(宣子)あの時違う道を歩んでいたらと思って、今の生活を後悔しているのではなく、違 う世界を未使用の空と考えました。人生を巡るように押し花を挿んでこなかった私にとっ ては、夢のあるゆとりのある句だと思って選びました。
 
(夫美子)採られなかった方で、嬉久子さんお願いします。
 
(嬉久子)大事な手帖だと思いますが、この未使用の空について、皆さんも考えられたの ではないでしょうか。私も未使用という言葉に思い至らずに採りませんでした。
 
(夫美子)未使用の空と言う意外な表現が受け容れられるか、抵抗があるかということと 思いますが、伸幸さんどうでしょうか。
 
(伸幸)未使用の空とはどういうことかと思いましたが、空は広がっていても、そこまで まだ気持ちとして到達していない部分があると、作者は捉えたのではないかと考えました 。
 
(夫美子)秀句に採られた俊介さん、まとめてください。
 
(俊介)未使用の空が未来で、押し花は過去の話かと思いました。未使用の空は未来に希 望を抱かせる空で、押し花は美しい過去に通じる思い出を想像させます。未来と過去を同 時に入れた新鮮な表現だと思い秀句にしました。こんな手帖を持ちたいものですね。
 
(夫美子)では作者にお聞きしましょう。
 
(作者)未使用の空は未来で、押し花は過去ですが、この手帖はスケジュール帖で、これ からの空白の手帖に希望に満ちた予定が入っていけばいいという思いです。私は一日が終 ったら手帖に書くのですが、介護している父が昨日より今日が元気だったとか、歌を何曲 歌ったとか、小さいことですが、楽しいことを出来るだけ書いて埋めていっています。私 にとってこの手帖は肌身離さず持っているもので、今日も一日終ったらじっくり埋めてい こうと思っています。
 

魚のいる夏を流れる線で描く俊 介
※伸吾※桐子※嬉久子 (伸吾)最初読んだ時、青で描くと読んだので青い色が浮かんできました。流れる線で描 くというのはとてつもなく面白いと思い、上手い方の句だと思いました。
 
(桐子)作者にとっての、ある夏というのは魚のいる夏で、魚は水中で冷たくて痛覚がな いイメージがあるので、それを流れる線で描きあげる夏と考えると、波のように寂しい感 じがしました。この一句の中に作者も漂っておられるような、作者にとって描き残してお かなければならない特別な夏だと思っていただきました。
 
(嬉久子)魚がいるということに新鮮な気持ちを感じました。その魚の泳いでいる現代の 地球を、流れる線で描くというのは、画家にとっても絵画全体から感じ取る事が出来る絵 というのがあるように、魚のいる地球、こんなきれいな地球が続いてほしいという気持ち につながって秀句としました
 
(作者)炎天でない夏、もう少し爽やかな夏を書きたいと思いました。そうすると過去の 夏が出てくるんですね。過去の夏では懐かしさみたいな夏になるんですが、そこに象徴的 な夏のものとして魚を取り出しました。あとはイメージで夏を書きました。
 


指切りの指黄昏て第二章華 子
※伸幸※篤世・健人・義範 (伸幸)この句は夫婦の句と読みました。上句の指切りと下句の第二章は対照的だなと。 若い頃の指切り、そして第二章は結婚して後の人生。黄昏はどちらかというと下り坂とい うことで少し気になりましたが、若い頃の夫婦が、今は豊かに人生の第二章を送っている 仲睦まじい夫婦だと、この句から感じました。
 
(健人)女性ひとりの句だと思いました。素直にとって、指切りの指が黄昏て、第二章に 到ったと取りました。
 
(義範)若い頃の例えば高校時代とか初恋の思い出を詠われたのではないかと。第二章は 同窓会などがあった時に恋心が芽生えてという切ない思いを詠われたのではないかと思い ました。
 
(夫美子)健治さん、採られていませんがご意見お願いします。
 
(健治)第二章あたりが。これから何が始まるか予感はあるのですが、第二章が物足りな い感じがして、違う言葉で第二章を言ったほうが、句にふくらみがあると思っていただか なかったです。
 
(桐子)人生のドラマを感じる句だと思いましたが、採らない時に敢えて欠点を探すとす れば、「指黄昏て」と漢字が続いているのが惜しい気がして、黄昏がひらがなの方が、こ の句だったら雰囲気が合うような気がしました。
 
(夫美子)句の姿、字から見たときの目での鑑賞というところですね。秀句にとられてい る篤世さんお願いします。
 
(篤世)第二章が希望を持たせる言葉で好きでした。第一章は静かに優しく、第二章は明 るく躍動的に、第三章は…というふうに、先に続いていく。黄昏は次の明けに繫がるもの だと思います。そういう連鎖の中で人間は日々新しく生きて繫がっていくと思って採りま した。
 
(作者)指を切るのは、二人にとって未来は自分たちのものとして、指を切ったわけです 。約束したのに、年月が経つうちに約束が果たせなくて、それぞれが別の人と歩いていっ たということです。漢字が多すぎると言われて、指をひらがなにすれはよかったと思いま したが、黄昏は漢字でなければ私の句は成立しないと思っています。いろいろなことがあ って、自分の中でひとつの決着をつけて思い出となり、自分の人生を新たに踏み出すこと を第二章としました。
 
〈テープ起こし:山崎夫美子〉
2017.5.27

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